外に出ると、部屋で栗羊羹を出してくれた老人が、落ち葉を入れたゴミ袋を引き摺りながら歩いていた。

「ふん。最近は、胡散臭いもんばかり来よる」

老人はロミを見ると、鼻を鳴らした。ロミは怯えた猫のような瞳を老人へ向けたが、老人はそれ以上こちらには目をくれず、ぶつぶつ言いながら行ってしまった。

「全く、残飯は漁られるし、上等のシーツは物干し竿から無くなっちまうし…… 猿の仕業だな。おまけに、またろくでなしが来て、 飛行機を貸せと言う。旦那はあいつらに騙されとるんじゃ。こんな調子じゃ、いつ秘密警察にしょっぴかれるか……」

 老人が行ったのとは反対方向へ、ロミは回った。

 小さな薪小屋があり、空っぽの鶏小屋があった。ごつごつした大きな岩が小さな段差を作り、その窪みに落ち葉が沢山溜まっていた。

 ロミは岩に登り、空を見上げた。と、一陣の風が吹き、周囲の紅葉から落ちる葉が、くるくると渦を描き始めた。
 その中心に真っ直ぐ立ったロミは、真っ赤な髪を風に散らし、ぼんやりと、火の妖精の乱舞を見つめた。

 自分も、この落ち葉の一枚となり、渦に巻き込まれて輪郭を失っていく、幻。

 しかし、幻想は唐突に終わった。
 風が止むのと同時に我に返ったロミは、何かの気配を感じ取り、下を向いた。

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