「ご無事でしたか、リーダー・ネモ」

 そう言って真っ先に壊れたソファから立ち上がったのは、満月のように太った、髪の長い女だった。

 小さな目を歓喜に輝かせながら、女はネモを、一番綺麗な席へ案内した。周りに座った人々は、口々にネモに挨拶した。 しかしその中でたった一人、拗ねたように唇を曲げ、後ろ向きにソファへ座ったままの者がいた。

「アリオ!」

 と、太った女は彼を睨みつけた。

「リーダー・ネモに何という態度ですか」

 貧弱な体に毛玉の浮いたセーターを纏った、巨大な鼠のような青年は、後ろ向きに正座したまま動かない。

 険悪な雰囲気の原因がどうやらアリオであると悟ると、オリザは急いで彼の元へ行き、尋ねた。

「何かあったのか」

「こいつがさあ」

 と、アリオの隣にあぐらをかいたミニスカートの少女が、ニット帽から伸びた長い金髪をいじりながら、面倒臭そうに言う。

「何かいきなり、わけ分からないこと言い出して。ワルハラでやらなきゃならないことがあるから、手伝えって」

「やらなきゃならないこと?」

「馬鹿馬鹿しい」

 太った女は吐き捨てると、威圧的にアリオを見下ろした。

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