「出資者風情が、私たちの活動に口を出すなんて」

「ふつーは企業ってスポンサーの言うことを聞くものなんだけどね」

「何ですって?」

 と、そこで、水溜りをつかつかと踏んでやってきたノキヤが、アリオの前に立ちはだかり、苛立ちの声を上げた。

「僕たちは、崇高なる理想の為に戦う組織だ。金儲けしか考えていない、そこらの人間と一緒にするな!」

アリオは上目遣いにノキヤを見上げると、わざとらしく肩をすくめた。ノキヤの顔が、さっと朱に染まる。その肩を、ダビドが叩いた。

「どうどう、ノキヤ」

「触るな!」

皆も落ち着いて、とダビドはにこやかに辺りを見回す。

「アリオの言うことも一理ある。まずは話を聞こうや。ワルハラでしなきゃならないことって、何さね?」

「復讐」

 しん、と沈黙が落ちた。

 オリザが戸惑った表情でアリオを見下ろすのを、レインは錆びついた緑色の扉の影から、じっと見ていた。アリオは不貞腐れた表情のまま、 ソファの背もたれに顎を乗せており、その様子からは本気で言ったのか冗談なのか、如何とも判別し難い。
 その表情のまま、アリオは前方へ向き直り、ネモに言った。

「だってさ、言ったじゃん。出資の話をした時に。金を出してあげる見返りに、僕の望みにも手を貸すって」

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