「僕たちの理想に、共感したからじゃなかったのか?」

 と、ノキヤが驚き半分、怒り半分の声を上げたが、他のメンバーは冷静だった。

「ほうら、私が言っていた通りでしょう、ノキヤ。この男は最初から、私たちの力が目当てだったのよ」

 太った女は勝ち誇ったように言うと、豊かな肉と髪を震わせ、ネモを振り返った。

「リーダー・ネモ。我々の資金源はもう十分に確保されています。もうこの男に頼る必要もありません」

 肘掛け椅子に座ったネモは、両の膝に肘を突き、顔の下半分で手を組んだまま、身じろぎ一つしなかった。

 不意に、部屋のざわめきが消えた。
 緊張に満ちた視線が、彼に集中した。

 短くも長い沈黙の後、ようやく、低い声が聞こえた。

「我々の計画は今、最初の最も重要な段階に来ている。個人の用に手を貸している暇はない」

 女を初め、メンバーたちは安堵と喜びのため息をついた。そしてすぐにそれは、アリオへの攻撃的な視線へと変わり、 何人かが脅すような素振りを見せる。その中でアリオは、憮然とした表情で立ち上がると、部屋の出入り口へ向かいかけた。

「忠告するまでもないが」

 ネモが地下に響くような声で呟き、扉に手をかけていたアリオ、彼を止めようとしていたオリザは、振り向いた。

「我々の情報を外部に漏らせばどうなるか、分かっているな。お前は反グール組織癒着の罪で逮捕され、残された家族は、我々『東方三賢人』 の報復を受けることになる」

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