今にも雷鳴轟きそうな曇天を思わせる、灰色の瞳。 まるで、それ自体が地の底から這い上がってきた一対の魔獣のような、眼差し。 自分が見つめられたわけでもないのに、レインの背中に、寒気が走る。 アリオも青い顔をして立ち竦んだ。が、やがて思いきり舌を出すと、荒々しく部屋から出て行った。オリザが 慌ててその後を追い、反射的に、レインも彼女を追った。 暗く長い廊下をずんずん進んでいくアリオの肩を、「待て」とオリザは掴んだ。 「いきなりどうしたんだ」 明滅する蛍光灯の明かりに照らされたその表情は、彼女らしくもなく混乱している。 「お前はいつも本当に、わけが分からない。そうやって唐突に変なことを言うから、仲間たちから信頼されないんだ……」 「じゃあ聞くけど、まさかオリザもノキヤみたいに、僕が『東方三賢人』の理想に共感したから出資者になったって、思ってたわけ?」 一瞬見せた青い顔はどこへやら、すっかり反抗的な子供の表情に戻って、アリオは言う。 オリザは青白い顔で黙ると、やがて、静かに口を開いた。 「……それでは、本気で『復讐』と言っているのか? お前には社会的地位のある両親がいて、莫大な財産も持つのに。わざわざ我々の力を 借りなければ復讐出来ないような相手が、いると言うのか」 -------------------------------------------------- |