ルツと再会した日の翌日、早速タキオは列車で、ワルハラ第一都市へ向かった。

 透明なドームで蓋をされたクレーターから地上へ出ると、緩やかな丘稜を臨む黒い平野が、車窓の向こうに広がる。 綿毛のような粉雪が舞っている。半年前、同じ列車に乗った時は、雨が降っていた。雨の中、緑がどこまでも広がっていたのを、 思い出す。

 やがて、多くの人々でごった返す巨大な第一都市駅のプラットホームに、タキオは降り立った。雪舞う第一都市は、 ドームで保護された第二都市よりずっと寒く、薄いジャンパー一枚の姿は、コートの前をかき合わせて歩く人々の中で、ひどく浮いていた。 白い息を吐く人々に混じり、タキオは路面電車に乗り込んだ。

 クリスマスを控え、街は華やかに飾り付けられていた。街灯に柊の造花が飾られ、頭上には大きな電飾の球がぶら下がる。 老舗百貨店の入り口を守る獅子の像には、赤いケープが着せられている。 移り変わっていく周囲の景色の向こうに、おどろおどろしい『五百の城』の尖塔が現れ、消える。

 やがて、通りの真ん中に、 道を割るようにして、一際立派な建物が現れた。巨大な階段、何本もの円柱に支えられた、立派な入り口を持つ建物だ。 階段の一番上に、サングラスをかけたぼさぼさ頭の男が、こちらを見下ろしていた。

「よう」

 と、裾長の黒いコートの下から刀の鞘を覗かせ、オズマは言った。

 建物の目の前の停車場で降りたタキオは、大股に車道を横切り、階段を上っていった。

「これが銀行か。大した建物だな」

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