そこでオズマは仕組みを説明してくれたが、いかにも面倒臭げに話を端折ったせいで、タキオは完全には理解出来なかった。
 とりあえず、エイト・フィールドが世界に連なる闇の金融ネットワークを持っていること。エイゴンでオズマが入金した銀行と、 このワルハラの銀行には、実はエイト・フィールドの息がかかっており、ネットワークの重要拠点の一つであること。 その二点を理解したところで、思わず声を潜める。

「じゃあ、ここに警察の捜査が入ったらやばいんじゃねえか」

「入るわけねえだろ。表向きには完全にクリーンな会社だ。企業どころか、一部政府機関までここを利用してんだぜ。 万が一ワルハラ警察がここを怪しんでも、十年単位で潜入捜査でもしない限り、確証は掴めないさ」

 そう話している間に、別の男の行員がやってきて、用向きを尋ねた。オズマはどっかりと椅子に足を組んだまま、 ルツの口座番号を伝え、自分の口座から彼女の口座に、五千万送金するよう指示した。男は頷き、下がった。
 胡散臭げにその背中を見送ると、タキオは皮肉っぽく言った。

「引き出した金が全部贋札だったりするんじゃないだろうな」

かもな、と懐からティッシュを引っ張り出しながら、オズマは事も無げに言った。

「でも安心しろ。『蜂』の造る贋札は本物と変わらねえから」

 『蜂』はまだ活動してるのか、とタキオは呟いた。

 絢爛な空間に、鼻をかむ音を盛大に響かせ、オズマは頷いた。

「勿論。アスナに代わって新しいボスも就任して、今日も元気に贋札を造ってるさ。何人幹部の首を取られようが、 『世界協定』は屁でもねえよ」

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