タキオは首を振ると、グラスに視線を落とし、呟いた。

「昔からの友人だ」

ガラスの表面に映った己の顔は、らしくもなく、寂しげに見える。

「そいつは計画の最終段階で、最も重要な役割を果たしてもらう予定だった。が、色々あって、そいつは計画から手を引いた。 例えルツに新たな使鎧を造ってもらったところで、あいつがいないんじゃ、意味がない。 あいつの代わりに役割を果たせる人間を見つけるまで、グール殺しはおあずけだ」

 だからその間に、まずはレインを助けに行くのだ。

 そう言って、タキオは新聞の束を指差した。

「余計なお喋りはここまでだ。この紙束のどこに、レインに関する情報があるんだ?」

 友人のことや計画のことなど、オズマはさらに追及したそうな様子だったが、鋼鉄の瞳に睨まれればそうもいかない。 ぶっきらぼうに、新聞の一面を指差した。

「そこに、現場から男子が一人救出された、って書いてあるだろ。アンブルにいる仲間からの情報に依れば、 そいつは十二歳くらいで黒髪黒瞳、左手に使鎧を付けているそうだ。爆発現場から救出され、アンブル第四都市の病院に運ばれたが、 奇跡的に、命に別状は無いらしい。ただ、言葉を全く喋らないので精神的ショックが疑われたのと、身元が分からないので、現在も 同病院にいる」

タキオは眉根に皺を寄せ、該当の記事を睨んだ。

「アンブルはワルハラに比べて治安が悪いからな。路上をうろついてるガキも少なくない。そういう一人として片付けられれば良いが、 今回はテロだから、秘密警察が裏で動いている。奴らがレインの正体に気づく可能性は、極低いが、無くはない」

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