袋はぐんにゃりしたまま、何も言わない。ふ、と自嘲気味にアリオは笑った。

「探してるわけないか。僕はもう彼女の―― ううん。
 最初から、彼女の仲間じゃ、なかったもん」

 僕は最初から一人だった。

 豪華客船でオリザと過ごした三日間、その前後に過ごした短い時間が、乳白色の光に溶け出していく。

「僕は『東方三賢人』の力が目当てだったし、オリザは僕の資金が目当てだった。うん。最初から、お互い利用していただけだった。 それでも、オリザは良い人だったよね。強かったし、優しかったし。だからオリザのことは好きだったけど、 だからって『東方三賢人』の仲間になれ、と言われても、お断りだね」

アリオは止め処なく喋り続ける。

「『東方三賢人』の理想や思想に共感も出来ないし、何より、ネモが嫌いさ。メンバーの奴らも、あんな男の言いなりになって、 馬鹿じゃなかろうか」

 ノキヤとか、滑稽を通り越していっそ哀れだよ、と袋に片肘を突き、アリオは呟いた。

 いつでもシャツのボタンを上まできっちり留め、何か文句言いたげにこちらを睨んでいた、ノキヤ。
 青く固い若枝のようだったその姿が、脳裏にくっきりと浮かび上がる。

 ノキヤとの思い出など、他の『東方三賢人』のメンバーと同じで、ほとんどないと言うのに――
 彼と一緒の空間にいた時間は、オリザと過ごした時間よりもさらに短く、交わした言葉は、数える程しかなかった――
 己の全てを『東方三賢人』に捧げていた彼と、『東方三賢人』を利用していたに過ぎない己と。 その隔たりは、歩み寄る気にもなれない程遠かったと言うのに。

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