化石の神秘的な雰囲気を醸し出すため、部屋の照明が少々暗くなっていても、周囲の人間がそんな美しい子供に気づかないわけがない。 受付の女性二人は、イオキを見てひそひそと囁き合っているし、親たちは、自分の子供でなく、 イオキを目で追ってしまっている。ロミの隣でスケッチブックを広げていた青年は、途中から、恐竜ではなく、 イオキを画くのに夢中になっていた。

 私だって、こうしてついつい彼を見てしまう。
 ロミはため息をつき、イオキから目を逸らすと、少し離れた場所にある大きな 掲示板に目を留めた。

 アクリル板の表面に、己の姿が映っていた。ロミはじっと、己の姿を見つめた。 タキオから貰った金で買った、イオキと揃いの栗色のマント。そこから伸びる、金属製の足。

 二本の足は、マントと同様、文字通りの新品だった。ルツが、彼女の成長に合わせ、新しい使鎧を造ってくれていたのだ。 装着してすぐは違和感があったが、数日間タキオとリハビリすると、前よりずっと自然に動かせるようになった。 使鎧自体が少し大きくなったので、背が高くなったように見えるし、無論まだ返り血も泥も、一滴だって着いていない。

 素敵な新しいマントを羽織り、素敵な新しい足で家の鏡の前に立つと、 頭の先から爪先まで、魔法の泉の水で、キラキラ輝いているように見えた。艶を増した赤い髪にリボンを結んだ姿は、 完璧に可愛らしく思えた。

 それでもこうして外に出れば、注目を集めるのは、精々両脚の使鎧くらいだ。それも、好奇の目である。

 ロミは好奇の目から逃がれるように、目を閉じた。

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