レインは私のこと、覚えてくれてるかな。足が新しくなったこと、気づいてくれるかな。頭のリボン、可愛いって思ってくれるかな。
 それともやっぱり、イオキが横に並んだら、そっちに目を奪われちゃうかな。

「……大丈夫?」

 ロミが目を開けると、いつの間にか、目の前にイオキが立っていた。声音は平坦で、何を思っているか分からない。 表情も影になり、見えない。ロミは微笑んだ。

「うん、平気だよ。もう全部見たの?」

イオキは頷くと、何か言いたげに黙っていた。やがて意を決したように、細い指を持ち上げ、展示室の外を指差すと、 消えるような声で言った。

「あっちで、化石発掘の体験が出来るんだって」

 ロミは目を丸くした。イオキがこんな、積極的な発言をするのは、初めてだ。一瞬戸惑ったが、すぐに喜びが湧き上がってきた。

「楽しそうだね!」

 ロミは弾むように立ち上がると、躊躇いがちに顔を上げるイオキの腕を取り、隣室へ向かった。

 展示室の隣は、明るく照らされた小さな教室で、長テーブルと椅子が並べてあった。数人の親子連れが、テーブルの上に屈みこんでいた。 二人が椅子に座ると、初老の指導員がやってきた。彼はにこにこ笑いながら、二人の前に布巾を敷き、 その上に白く粉っぽい拳大の岩石を置いた。

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