「流石に今年度中は無理だろうけど、来年には職務復帰出来るだろう、って。良かったですね!」

 テクラは、曖昧に微笑んだ。

 来年なんて、遅過ぎる。

 テクラは目を閉じた。そしてしばらく黙っていたが、やがて目を開けた。

「……トマさんとグレオさんは、別の班と一緒に、新しい任務に着任したそうですね」

 ツユリの目に、動揺の色が走る。

「え? はい。えっと、誰から聞いたんですか?」

「昨日、諜報部長が見舞いに来てくれて」

ああ、とツユリは嘆息に似たものを漏らし、スカートの裾を引っ張った。

「はい。そうみたいですね。反グール主義テロリストの疑いがある人物の捜査だそうです。その人物が誰かは、勿論 私は知らないですけど。ガンさんによると、この前オーツに上って逮捕された男らしいですよ。本当にその人がテロリストだとしたら、 怖いですね。何を企んで、オーツに上ったんでしょうか」

 確かに、ワルハラ第二都市の閉鎖空間に酸素を供給するオーツに、万が一のことがあれば。少し考えるだけで、 冷や汗が出るような事態を幾つも想定することが出来る。

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