と、ベッドを囲うカーテンを開け、今まさに出て行こうとしていたツユリが、振り向いた。

「そう言えば、エナのことなんですけど」

 不意を突かれたテクラは、半開きの口で、ツユリを見つめた。

「あの子、随分、施設に馴染んできましたよ。まだ全然、心は開いてくれないけれど、少しだけ表情が柔らかくなってきました」

ツユリは力を込めて、言う。

「先輩からもらった兎のマスコットだって、捨てずにちゃんと持っているんですよ!」

 白い歯を見せて笑いながら、ツユリの頬は、紅潮していた。雪の中で一輪の花を見つけた時のように。 明るい未来に、顔を輝かせ。

「私、信じているんです! どんなに喧嘩しても、憎み合っても、いつか笑える日が必ず来るって!  ヒヨ先輩とテクラ先輩がまた一緒に仕事をする日だって、必ず来ますよ!」

 そう言うと、ツユリは大きく手を振った。

「また来ます」

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