良くも悪くも、レインは声を出すことも首を振ることも出来ない。黙っていると、白衣の女が助け舟を出した。

「まだ意識が朦朧としているだろうし、受け答え出来るようになるまでは少し時間がかかるさ」

「あら、そう」

金髪の女は大仰な動作で枕元のパイプ椅子に腰かけ、足を組んだ。

「でも、是か否かくらいは、答えられるでしょう?」

 そこで、レインは気づいた。他にも複数の人間が、自分を取り囲んでいることに。彼女のコートとよく似た制服、 つまり、襟のかっちり詰まった軍服を着た男たちが、こちらを見下ろしている。

 彼らを従え、女は、麗しくも横柄な口調で命じた。

「是なら瞬き一回。否なら瞬き二回で答えなさい。あなたは『東方三賢人』の仲間なの?」

 トウホウサンケンジン?

 その言葉が何を意味するのか思い出すまでに、随分、時間がかかった。 回転木馬が動き出すように、記憶はゆっくりと蘇っていった。その間、軍人たちのただならぬ視線を浴びるのは、 まことに気分が悪かった。

 ようよう記憶の概要を取り出したレインは、迷うことなく、二度、瞬きした。
 それを見た女は、鼻で笑うと、立ち上がった。

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