「何やってんだ!」

 突然、標的が弾幕に包まれたガロウは、急停止する。それでも何発か流れ弾に当たってしまったのか、腕や腰に、 血の染みが広がり出す。

「どいてろ、ガロウ!」

 一歩遅れて入ってきた、隊長らしき男が、マシンガンの後ろから怒鳴る。

「こいつの首は、俺たちが取る!」

「馬鹿野郎! こいつに銃弾が効くかよ! よく見ろ!」

 何、と隊長格は目を見張るが、もう遅かった。

 銃弾は、マシンガンと真っ向に対峙したタキオを襲ったが、無論、彼は傷一つ負わなかった。 銃弾を受け床に落ちたのは、タキオの正面に絡みついていた、ゴズの方だった。

 自由になったタキオが跳躍すると、秘密警察官たちはどよめいた。

「くそ!」

 その跳躍方向を見て、いち早くこちらの意図を察したガロウが、阻止しようと駆け出す。 しかし今度ばかりは、こちらの方が速い。

「悪いな」

 と、ガロウが踏みつけた床跡に向かって、踵落としを喰らわせながら、タキオは呟いた。

 上手いこと、オズマと合流してくれよ。

 皹入ったコンクリートは、タキオの踵の下でたちまち砕けていく。 ガロウとゴザ、そして十数人の秘密警察官たちを巻き添えにし、タキオは部屋ごと、下の階へ落下していった。

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