「買えた?」

「いんや」

 線路の近くの売店から、タキオが戻ってきた。すかさず駆け寄ってきたロミの質問に、肩をすくめて答える。

「わけが分からん。切符は売っていない、列車の中で買えるから大丈夫。だと。本当に大丈夫なんだろうな。ったく……」

 とは言うものの、すぐ目の前に線路があり、ホームも見えるものの、駅舎らしい建物はどこにも見当たらないのだった。

 ユーラクの田舎はどこもこんなものだ、とロミが弁解した。
 ワルハラの近代的な線路しか見たことがないレインにとって、不思議な風景だった。 駅舎もなく、アナウンスもなく、線路などまるでそこに無いかのように、村人が自由に行き交っている。 列車がやってくる気配は、まるで無い。イオキも同じ気持ちなのか、じっと雑草に覆われた線路を見つめている。

「まあこれでも、数年前よりは、随分ましだ。とにかく、一時間後には、列車は確実に来るみたいだからな」

 タキオが言い、「だね」とロミが同意した。

 その会話からは、雰囲気からは、二人がこの国を訪れるのが初めてではない、と察せられる。

 ロミはユーラクの出身で、時の領主に両脚を喰われ、瀕死の状態だったところをタキオに救われた。
 そう、レインは彼女自身の口から聞いている。

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