この、砂混じりの風が吹く土地が、彼女の故郷なのだ。ほんのり汗ばむ、乾いた空気が。頭をスカーフで覆った人々が。

 この地面を、金色でない足の、幼いロミが歩いていたのだ。

 ぼんやりとレインが、タキオと会話するロミを眺めていると、不意に金色の瞳が、こちらを振り返った。

「じゃあ列車が来るまで、買い物しよう!」

 つかつかとこちらへ歩いてくると、少し背伸びし、レインの頭をぐしゃぐしゃかき回す。レインが驚く間もなく、黒く縺れた髪の間から、砂粒が落ちる。
 自身も頭を振り、イオキの頭にも目をやりながら、ロミは言った。

「とりあえず、スカーフを買わなくちゃ。砂、ひどいでしょう? 何か頭を覆う物がないと、あっという間に砂だらけになっちゃうよ」

 そうだな、とタキオも頭を掻きながら頷いた。他にも細々した物を補充しないといけないし。

 そこで四人は駅を離れ、道を歩き出した。

 小さな村で、子供たちは学校へ行き、大人たちは仕事をしている時間なのか、人影はごくまばらだった。 白く塗られた家の壁のあちこちに、赤いゼラニウムやピンクのプリムラ、紫のパンジーなどが鉢に入れて吊るしてあったが、 それらは皆色鮮やかで、強い日差しを浴びて輝くような白い壁に、よく映えていた。

 やがて、一軒の家の軒先に、スカーフを入れた木のワゴン見つけた。チューリップ柄のスカーフをかぶった老婆が、 ワゴンの横で居眠りしていた。ロミは慣れた手つきでワゴンに手を突っ込むと、満月のような黄色が薄く透けたスカーフを、引っ張り出した。

「これ、イオキどう?」

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