最後尾から三つ目の車両、丁度急なカーブにさしかかり、視界から消えかけている車両の上に、誰かが、 線路脇から飛び乗ったのだ。それも、飛翔する燕のような、優雅な弧を描いて。


 どこか見覚えのあるその姿と、目が合った。


 次の瞬間、レインは半身が柵に接触し派手に転び、線路の砂利に顔を突っ込んだ。

「レイン!」

 ロミの悲鳴があっという間に遠ざかっていく。痛む鼻柱を押さえながら、慌てて顔を上げると、 最後尾がカーブを曲がり、視界から消えようとしている。イオキを担いでデッキに飛び乗ったタキオが、舌打ちし、 デッキから飛び降りようと身を屈めた。

 と、そのとき、レインの体が、宙に浮いた。

 まるで鳥のように、レインは空を舞った。気持ちの良い飛翔感の下に、何かに首根っこを引っ張られているような感触が、 僅かにあった。大きな弧を描くようにして、レインはデッキの真上まで飛んだ。

 そこで、ぷつりと糸が切れるような音がした。ぽかんと口を開けているロミとイオキの間へ、レインは落下した。

「何だ? 今の。飲み過ぎて目がおかしくなっちまったかな」

 あやふやに呟く男たちの声を聞きながら顔を上げると、ロミとイオキが、心配そうにこちらを覗き込んでくる。

 その後ろで、タキオが宙を睨んでいた。

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