「凄い。今の、どうやったの?」

 イオキに尋ねられ、レインは首を振る。分からない。少なくとも、自力で飛んだわけではない。 ロミが、戸惑った顔でタキオを見た。
 宙を睨んだままタキオは鼻を鳴らした。

「大丈夫だ。カラクリは大体分かっている」

「えっ?」

「いずれは何とかしなきゃならんが、今のところこちらに害を与える気は無いようだし、放って置くしかない。下手に手も出せないしな」

 すると四人の後ろで、デッキから車内へ続く扉が開いた。空色の制服を着た車掌が、一連の出来事を見ていたのかいなかったのか、 とにかく、散乱した荷物の中に埋もれ息を荒げている四人を見ても顔色一つ変えず、手を突き出してきた。

「乗車券はお持ちですか」

「持っているように見えるかよ」

とタキオが憎まれ口を叩いても、全く動じない。

「それでは運賃を払ってください。どこまで行かれますか」

 タキオは溜め息をつき、行き先を告げた。「急行なので、その駅には停まりません」と言われた。「勝手に降りるから。乗った時みたいに」 と答え、その先の駅までの運賃を払った。運賃を自分のズボンのポケットに入れ、車掌は、デッキ出入り口脇の車掌室に入っていった。 すぐに、車内アナウンスが聞こえてきた。

『危険な乗車は、運行に支障を来たしますので、お止めください』

 タキオが車掌室に蹴りを入れようとするのを、ロミが慌てて止めた。安酒を呑みながら、周囲の男たちが囃し立てた。

 口の中に入った砂を吐き出しながら、一体何処であの男と会ったのだろう、とレインは首を傾げた。

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