「もう、二人とも戻ってこないから、心配したんだよ」

 家畜の輸送車を思わせる狭い車内で、ロミは、お説教口調で言った。

「人が落ちたって聞いたときには、もしかして、と思ったんだから」

 「天空の滝を走行中、列車から人が落ちた」だの「否、落ちない」だの、車内に不穏な噂が流れ始めたのは、 列車が、ロミたちが降りる予定の駅に近づく頃だった。

 トイレに行くと言って消えたイオキも、続いてふらりといなくなったレインも、タキオが「列車を探検しているんだろう」 と言うから放置していたが、噂を聞いて心配になった。 それで探しに行ってみたら、当人たちは、楽団と一緒に、呑気に踊っていたのだから。 ほっとした後に、少々の怒りがこみ上げてきたのも、無理はない。全く、列車に揺られている間、 ロミは様々に思い悩んでいたと言うのに、この二人ときたら。

「ごめんなさい」

 と、ロミの心中まで知ってか知らずか、大人しくイオキは謝った。レインも神妙に顔を伏せた。

 ロミは態度を和らげながらも、まだわだかまりが残る気持ちで、二人から目を背けた。

 無事に目的の駅で降り、次にロミたち一行が乗ったのは、さらに辺境へ向かう長距離バスである。バスと言っても、 座席を取っ払い、そこに十数人を押し込んだワゴン車だ。車内の空気と言い振動と言い、乗り心地の悪さは、列車の比ではない。

 運転手が流す大音量の音楽に耐えつつ、窓の外に目をやると、どこまでも荒野が続いている。同じ砂漠でも、 列車から見た雄大な景色とは、雲泥の差だ。 黄色っぽい砂が、地面を貧相に這う。ところどころ生えた植物は刺々しく、悪魔の彫刻を思わせる。

--------------------------------------------------
[1317]



/ / top
inserted by FC2 system