女王はミトの頭から手をどけると、両手で彼の頬を包むようにして、上向かせた。小動物を無心に眺めるような目と、
優しく微笑む目が合った。 「僕たちの新しい兄弟は?」 「問題ないわ」 そう答える彼女の、石膏の内側に球体を埋めたような下腹部で、微かに第三の生物が蠢いている。 「あと数ヶ月もすれば、新たな人喰鬼がこの世に誕生する。そしてその子供が成長し、私と子供を成して、死ぬ。父親と同じように」 女王は唇を閉じた。ミトも黙った。 「……ようやく、僕を喰らう気に?」 女王は首を振った。 「私が血肉を必要とするのは、受精直後のみ。今の私にはまだ、ムジカの血肉が残っている。あなたを喰らう必要は、無い」 言わずもがなだ。彼女が子供たちを召命するのは、新たな子供を作る時と、 産んだ子供を預ける時だけ。ミトも勿論、心得ている。今は、そのどちらの時でもないと言うことを。 「それなら何故、僕は呼ばれたのだろう」 -------------------------------------------------- |