二番目の子供、イオキが生まれるまでは。



 ――そんなの無理よ。美しい花はやがて枯れ、天の星さえもいつかは死ぬ。何故そんな、悲劇の種を育てるようなことをするの?



 女王はそう言った。

 叶うならば、僕の子供として、いつまでも傍にいて欲しい。

 と、言ったミトに。


 洗脳されてからおよそ五十年後、服を着て女王の寝台から立ち去ろうとするミトに。

『この子が生まれたらどうしたい?』

 女王が尋ね、ミトは彼女の下腹部を見下ろした。つい先まで、自分が頭を乗せていた下腹部を。 勿論、受精直後のその腹にまだ膨らみなどなく、滑らかに起伏しているだけだが、しかしはっきりと、新しい命の息吹が感じられる。

 前回は、一人目の子供が授かった時には、そんなことは尋ねられなかった。訝しく思いつつ、ミトは答えを探した。 考えたこともない、全く不意を突かれた問いだった。そもそも、どうしたいもこうしたいもない。新たなグールが生まれれば、 然るべき人物が保護者となり、その子が領主となるまで庇護するだけではないか。

 しかし気づけば、考えるより早く、言葉が出ていた。

『叶うならば、僕の子供として、いつまでも傍にいて欲しい』

 と。

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