レインが差し出したサクランボを、ロミは無視した。

 その瞬間、レインは深く傷ついた。

 伸ばした手を振り解かれ、動揺したことは、今までにもあった。 マリサのおやつをうっかり食べてしまい絶交宣言された時や、ミアンの手がすり抜けていった時。しかし今回は、そのどれとも違う。

 拒絶された悲しみは底深く、嫌われたのかも知れない、と言う不安は計り知れない。 そのまま夢遊病者のように歩き去っていく彼女の背を、追いかけたいのに、体が動かない。

 追いついて、再び拒絶されたらどうしよう?
 恐怖で、足が竦む。

 タキオが歩き出したのを見てようやく動けるようになったが、一緒に行こうとすると、タキオに制された。

「俺が連れ戻してくる。お前らはここで待っていろ」

 そうしてレインは、イオキと二人、雑踏の中に取り残された。

 レインはイオキと二人で道の端に移動し、腰を下ろして、サクランボを食べた。空に舞う凧を眺めながらぼんやり食べていると、 袋はたちまち空になった。

 空の袋を手に、レインはぼんやりと考え続けた。
 イオキも、何も言わなかった。

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