空高く、空高く、昇っていく。

 その勢いにイオキが引っ張られているのを見ると、ロミはレインの手を解き、つむじ風のようにイオキの元へ戻った。 体をくっつけるようにして隣に立ち、一緒に糸を引っ張る。レインも急いで、二人の元へ駆け戻る。

 どう、と吹く風の中に三人は体を寄せ合い、一緒に糸を手繰った。

「わあ!」

 と、イオキが高らかな笑い声を上げる。ロミも笑う。レインも笑う。


 凧は、一番星の隣に、高く輝いた。


 その時レインたちの中には、悲しみも、怒りも、不安もなかった。ただただ、心の底から愉快だった。
 手の中で糸が引っ張る感触も、頬を切る風も、上がっていく息も、弾ける笑い声も。
 全てが、生まれたての赤ん坊の瞳のように、輝いていた。


 タキオも笑いながらその様子を見守っていたが、やがて、周囲が暗くなってくると、声を上げた。

「そろそろ下ろせ。この暗さで木に引っかかったら、取れないぞ」

 子供たちは名残惜しそうにしながらも、言われた通りにした。いつの間にか、空は朱色から白、 紺色へのグラデーションに星が散りばめられ、風が冷たくなっている。イオキがくしゃみをし、ロミが「大丈夫?」 と声をかける。

 一人、寒さを物ともしないタキオの元に、三人は集まった。丘の天辺から見下ろすと、今や人はほとんど居らず、 屋台も店じまいをしている。

 サクランボ売りが、閉めた屋台を引きながら、通りかかった。こちらに気づき、手を振ってきた。レインたちも振り返した。

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