空を仰ぎ、イオキが澄んだ声で、それに唱和する。 「ほーしはー、そーらをー、ちーりばーめぬー」 やがてロミが、それに加わった。 遠き山に 日は落ちて 星は空を 散りばめぬ 今日のわざを なし終えて 心かろく 安らえば レインは黙って、彼らの歌を聞いていた。聞いたことが無い筈なのに、何故か生まれた時から知っているような気がする、歌を。 漆黒の瞳に、最後の一片を投げながら沈む、太陽が映る。刻一刻と新たになっていく世界の姿は、本当に美しい。 薄い黄金の上に輝く、濃い群青色の星空。花の香りがする風。共に家路を辿る人々。 けれど、全ての人々に帰る家があり、どれだけ世界が生まれ変わっても、郷愁と寂寞で胸を満たす歌は、永久に続くだろう。 レインは泣きそうになるのを堪え、彼らの歌を聞いていた。 そして最後は、彼らと共に、歌っていた。 風は涼し この夕べ いざや 楽しき まどいせん -------------------------------------------------- |