泣きたいだけ泣いた後のような、心地良い静寂が、訪れた。 いつの間にか、子供たち三人は、手を握り合っていた。レインの生身の右手を、ロミが。使鎧の左手を、イオキが。 それぞれ違った色を持つ温もりが、両手から伝わり、体の真ん中で融合するような感覚が、レインを満たしていた。 レインを中心に手を繋いだまま、三人は、暮れなずむ空を見ていた。 「……私、この日のこと、一生忘れない」 ロミが呟いた。 レインもイオキも、黙っていた。けれど、気持ちは同じだった。 きっと、一生忘れることはないだろう。三人で手を繋いだこと、一緒に歌ったこと。 胸の底で互いに抱き続けてきた、疑念、恐れ、悲しみを超え、完全に許し合い、体温を感じたことを。 人間の少女と人喰鬼の少年が、『人間農場』の家畜を通じ、触れ合った瞬間を。 その日は、公園に泊まることになった。 帰りの最終バスをとうに逃し、帰る足を失ったタキオは、公園の管理人に無理言って電話を借りた。 明朝迎えに来るようオズマに伝え、更に無理言って、管理室の簡易宿泊所に泊まる許可を取りつけた。 -------------------------------------------------- |