その、静かな言葉のどれかが、胸の深淵にある炎に触れた。


「ほとんど成功する見込みもない計画に命を賭けているのは、そっちだって同じじゃない!」

 振り向きざま、ロミは叫んだ。

「タキオが決めたみたいに、これが私の決めた道だよ!」


 同時に、彼女の激情に反応したかの如く、鈍色の波が大きくうねった。

 小さな漁船は持ち上げられ、舳先に立っていたロミは、よろめいた。 タキオに掴みかからんばかりの勢いで振り向いたのと相まって、危うく、舳先から転がり落ちそうになる。 その腕を、素早くタキオが掴んだ。ロミは顔を真っ赤にして、相手の手を振り解こうとした。

「おい、危ないぞ!」

「離してよ! どうせ私なんか……!」

 と、不意に、波も止まるような静止が、訪れた。

 ロミとタキオが揃って目をやると、船室から甲板に半分顔を出した、キリエの姿があった。

「五月蠅い」

 それだけ言うと、彼女は船室に消えた。

 後には、更にその後ろから遠巻きにこちらを見ている、オズマが残った。

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