ミトは、うっすらと目を開けた。

 一瞬、まだ、夢の中にいるのかと思った。どんな夢か―― 具体的には忘れてしまったが、ひどく甘い夢の中に。

 見上げた木々の隙間から零れ落ちる陽光が、辺りを白く光らせている。風が静かに葉を鳴らす。 万華鏡のようにさざめく木々よりも、さらに美しい瞳の子供が、こちらを覗き込む。

 ミトは、木陰に敷いた敷物の上で仰向けになったまま、イオキの頬に手をやった。 イオキは嬉しそうに微笑み、手に頬をこすりつけると、セーラー服に半ズボンという恰好で、ミトの傍らに寝転んだ。
 すぐ側では、キリエが、昼食の後片付けをしている。久々の休日で繰り出した春の遠足も、午後の涼しい風に、緩やかに微睡んでいる。

 ミトの心臓に耳を当てるようにして、イオキは絡みついてくる。その背中を優しく撫でながら、ミトは答える。

『森の奥はとても深い…… きっと迷ってしまう』

『ミトと一緒でも?』

『駄目だ』

 体の側面にイオキの体温を感じながら、ミトは呟いた。

『森はあまりに深いから、きっと、離れ離れになってしまう』

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