こんな醜い様相を晒したのは、『東方三賢人』に捕らえられて以来だ。 けれど無論、そんなことに構っている暇はない。

 最後にもう一度、集中力を正すと、ミトは、人が溢れる第一都市へ飛び込んだ。 己が指導した都市計画によって建てられたビル群、整備された並木道、由緒ある建築を利用した活気ある市場。 そこで笑う人々の上を、目にも留まらぬ速さで通り過ぎ、ようやく、目指す建物が見えてきた。

 砂色の石を積み上げ、丸い天蓋と緻密な彫刻で飾られた、古い王宮を思わせる建物が、政府議事堂だ。 獣に近づいてもなお愚かではなかったので、ミトは立ち止まると、衣服の乱れを整え、裏通りの小さな水盤で手と顔を洗った。 それから瞳に端正な笑みを浮かべ、堂々と議事堂へ入っていった。

 突然現れた領主代行に驚く人々を尻目に、ミトは、秘書室へ向かった。扉を開け、筆頭秘書の席に誰もいないのを確認すると、 部屋に居た人々に尋ねた。

「コジマは何処にいるのかな」

染み一つないシャツに真っ直ぐ折り目のついたスーツを着た秘書たちは、答えた。

「本日体調が優れないので欠勤すると連絡がありました」

「そう…… 彼女の住所を教えてくれる?」

 驚いたように、秘書たちは顔を見合わせる。
 しかしすぐに、彼女を書いたメモが、手渡された。

 ミトは礼を言うと、議事堂を後にした。

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