『貴方という名君に鞍替えしたことにより、私は何とか、近隣住民たちの許しを得ることが出来ました。 現在も村八分にされ、大家からは顔を合わす度、ムジカ様に喰い殺された息子家族の怨みを当てつけられますが、 それくらいで済むなら、大変な幸運でしょう。

 貴方はユーラクと言う国の命を救い、私と言う人間の命を救ってくださいました。

 それなのに、恩を仇で返すような真似をしたことを、大変申し訳なく思っています。

 もうお気づきでしょう。昨秋、第六都市で起きた、大規模火災の真相を。 多分貴方は、消火の陣頭指揮を執られている最中から、感じていらっしゃったと思います。 あの大規模火災が、十七年前、ワルハラの高級避暑地で起きた火災と酷似していたことに。

 そう、あれは私が、ムジカ様の指示で起こしました。数人の仲間と共に――  秘密警察が活動休止などしていないことも、貴方は気づいていらっしゃったでしょう――  住人の飲み水に薬を混ぜて眠らせ、全員を拉致した後、化学薬品工場を爆発させました。

 拉致した数百名の住民は、ムジカ様の元に運び、その後彼らの安否は知りません。 でも貴方は、彼らの行く末を、御存知の筈です。

 ムジカ様は、生きていらっしゃいます。

 グールの女王に喰われることを、免れたのです。

 そしてその代償として、何百名と言う人間の血肉を、私たちに用意させたのです。 十七年前、貴方が行ったのと同じ方法で。』

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