次の瞬間、耳をつんざくような銃撃音がし、男の姿が消えた。

 カメラが目まぐるしく動き、青い空間の中を、目にも留まらぬ速さで移動する男の姿を捉える。 銃弾が絶え間なく、右から、左から、天井から降り注ぐ。 銃撃音に合わせ、腕が六本もある異形の怪物が、天井を這いずるのが見える。


 鋼の体で銃弾を防ぐタキオの姿を、レインは、瞬きもせずに見ていた。



 そして、視界の端を、金色と赤の影が過ぎったのを見た瞬間、肺の中の空気が、固くなった。



 それきり、どれだけ目を凝らしても、赤と金の影が映ることはなかった。吸い込む空気が透明に戻ることも、なかった。


 背後から突き飛ばされ、レインはよろめいた。気づけば、テレビの前は押し合いへし合いの大群衆になっている。 穏やかだった街が嘘のように、混沌のざわめきに満ちている。

「テレビを切りなさい!」

 と叫びながら、警官が数人、駆け寄ってきた。しかし、人々が従う筈もない。警官が人々を押しのけ、人々が警官を殴る。

 這う這うの体で群集から逃げ出すと、レインは、しばらくその場に立ち尽くしていた。 が、やがて拳を握ると、誰もいない方角に向け、走り出した。音もなく胸を蝕んでいく空気を吸いながら。

 ルツの元へ。ルツの元へ。

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