美しい鋭角の顎が、にやり、と笑うのと同時に、回転したムジカの腕が、ミトの右腕を肩から吹き飛ばした。

 何十年ぶりかの激烈な痛みだったが、ミトは顔色一つ変えず、残った左の手刀を、ムジカの体に振り下ろした。

 右肩から左脇腹まで、ムジカの体が真っ二つになる。支えを失った上半身と下半身は、それぞれ流砂へ落ちていく。 すかさずミトは上半身の胸倉を掴むと、落下していきながら、更に攻撃を加えた。 半壊した円蓋へ着地した時には、ムジカの上半身は粉々になり、掌より小さい肉塊に化していた。 その血と肉片を浴びたミトの体は、赤い斑に。

 早くも再生した右腕で左手の肉塊を払い、ミトは、流砂の底を見下ろした。

 下半身がまだ残っている。再生してくる筈だ。

 と思った途端、百メートル程離れた場所から、砂飛沫が上がった。

 すぐさまミトは、そちらへ跳んだ。大きな城塞のような建物の、幾何学模様に組まれた石の壁を突き破り、小さな部屋が幾つも連なった空間へ飛び込む。 部屋は全面鏡張りで、小さな出入口が二か所あった。その一つの奥に、五体満足のムジカの姿が、見えた。 こちらと目が合うなり、ムジカは身を翻した。ミトは追った。

 次の部屋に入ってすぐ、この空間が、まるで迷路のようになっていることに気づく。 一体どのような目的で作られたのか、考える暇はない。壁をぶち抜けば一直線に彼を捕らえられるが、 それでは建物ごと崩壊してしまう。

 錆だらけの鏡にチラチラ映る影を追い、走った。少しずつ距離が開いていくが、やがて唐突に、迷路から抜けた。

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