同時に、真正面から飛んできた槍が、ミトの心臓を貫いた。 柄から穂先まで精緻な装飾を施された、巨人にしか扱えぬような大きさの青銅の槍は、そのまま背後の鏡まで突き刺さり、 ミトの体をぶら下げた。

 見れば、迷路の先にはだだっ広い広間があり、奥に玉座が据えられている。玉座の背後には朽ちたタペストリーが掛かり、 その上に、槍と交差するように飾られていたのだろう、やはり巨大な斧が斜めに掛かっている。
 その斧も、玉座に足をかけたムジカの手に渡った。斧に比べれば人形のような体躯で、ムジカは易々とそれを投げた。 槍を引き抜いて逃れるより早く、肉厚の刃がミトの首を粉砕した。

 首を失ったミトの体が、一瞬、だらりと下がる。そこへムジカが、飛びかかる。 その爪が体を引き裂こうとする寸前、首無しのミトの腕が持ち上がり、彼の手を挟む。 そのまま手首が翻り、ムジカを、横の鏡へ叩きつける。

 衝撃で、鏡の小部屋が崩れ落ちる。
 しかし数秒後、鈍く光る瓦礫の中から飛び出したのは、衣服以外傷一つないミトとムジカだ。

「よもや貴様とこうして闘うことになるとは!」

 玉座の間を疾走しながら、ムジカが大きな口を開ける。

「しかし思えば、俺はずっと、貴様とこう在りたいと願っていた気がするな!」

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