二人は広間の壁をぶち破り、外へ飛び出した。

 建物の外には、これまた迷路のような街が、広がっていた。赤い砂に沈みゆく、灰色の死に絶えた街が。

 『空中楼閣』の名の通り、宙に広がる街だった。無数の橋や門、搭、階段が三次元的に絡み合い、その上に建物が生えている。 中には茸のように、重そうな街並みを一本で支える搭もある。逆さに生えている家々もある。 ダイヤモンドのように交差する何本もの階段がある。

 闘いながらそれらの上を走り抜けていく二人の足元で、瞬く間に遺跡は壊れていく。家が砕け散り、橋が崩れ、広場が消失する。 次々と瓦礫が流砂に落ち、舞い上がる砂埃が、ゆっくりと辺りを包む。

 その中で、ミトとムジカの闘いは、息つく間もなかった。爪で、牙で、足で、相手を切り裂き、噛み千切り、蹴り飛ばし、 相手を一片残らず消し去ろうとする。

 しかし、皮膚も血管も神経も、破壊された傍から再生する生物同士だ。
 相手の肉体を破壊する感触が、己の肉体を破壊される痛みが、血と脳漿の匂いだけが、いつ果てるともなく続く。

 そして、何を見ているのだろうか、己は?
 何が聞こえているのだろうか?
 何を思っているのだろうか?

 ただ、真っ白な息しか、出てこない。


 すると、ムジカが言った。

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