どれだけ繊細で芳醇な言葉を編み出したところで、結局は、その程度の単純な言葉が、最も根源に近いのか。 人喰鬼も人間も。 そんな下らないところで、喰う者と喰われる者が、共通しているのか。相容れぬ者、憎みあう者同士だが、決して完全に分かたれているわけではないのか。
 と、感慨深く、どこか悲劇的な気持ちで、ミトは思う。

 そして、よりによってムジカが、その事実の一端を曝け出すとは。
 滑稽だし、いっそ微笑ましい。
 そして無論、哀れだ。

 洗脳の玉座に座った人喰鬼は、そう言って穏やかに笑う。

 しかし同時に、最愛の子を奪われかけた人喰鬼の前には、どんな感情も理性も、存在しない。

 在るのはただ、殺意だけ。


 ムジカを生かしてはおけない。イオキに再び手出しする可能性が、潰えない限り。その原因である恋情を、捨てられない限り。 そこに正当な理由など、ありはしない。



 ただひたすら、僕が、イオキを独占したいだけのことだ。



 細胞が再び寄り集まり、分裂し、肉体を形作っていく僅かな時間の中で、ミトは独白した。

 そして目を開けた時、すっかり憔悴したムジカの顔が、あった。

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