「どうやら、その必要はないようね!」

 そう叫ぶと、天井からぶら下がっていたニィナは、巻き毛を振った。 彼女の足を吊っていた糸が生き物のように動き、彼女の体を、巣の中の安全な場所へ逃す。ロミの蹴りは、空振りに終わった。

「蜘蛛の遺伝子を組み込んだ、生体兵器どもの親玉か」

 続けざま放たれた銃弾を、ロミの前に飛び出して弾き返し、タキオは呟いた。

「気をつけろ。手足が多かったり、糸を自在に吐くだけじゃない。奴らの腕やうなじに、目があるのが分かるか」

 ニィナもナギも長い髪を結い、うなじを剥き出しにしている。そこに、大きな目があって、ぎょろぎょろ動いている。 マントや袖の下に隠されていた彼らの腕にも、同じ目が複数ある。

「他にも俺たちから見えない場所に、あるかも知れない。蜘蛛の複眼だ。あの目と糸で、弟は俺たちの動きを邪魔しつつ、 姉の動きに手を加えている。姉は弟にサポートされ、全方位から、六本の腕で襲いかかってくる。厄介な相手だぞ」

 ロミは無言で頷いた。

 銃撃の切れ目を狙い、二人して別方向に飛び退ると、タキオは怒鳴った。

「中継はどうなっているんだ!」

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