インタビューと言うよりは対談、対談と言うよりは論争になるだろう。 相手は、有名なグール支配支持派だ。コメンテータとして出演するワルハラ日報テレビの情報番組で、ニルノが新聞で展開してきた論調を、度々批判してきた。 そんな相手との対峙が、憂鬱なわけではない。むしろ、正々堂々己の主義を主張してやろう、と意気込んでいる。

「でもやっぱり、アイのことが心配だよ」

 ニルノが囁くと、アイは笑った。

「それじゃ、仕事が終わったら、ドリルを持ってシャッターを壊しに来て頂戴。そろそろ切るわね。 私、これから地元テレビのインタビューを受けなきゃいけないの。オーツのことを説明して、第二都市の皆を、安心させてあげなきゃ」

 またね、と爽やかな初夏の風の如く、電話は切れた。

 溜め息をつきながら受話器を置くと、編集長の鬼のような顔が、目の前にあった。

「あ、あ、もうこんな時間か! テレビ局へ行ってきます!」

 ニルノは机から飛び上がると、鞄を引っ掴み、部屋を飛び出した。

 ニルノは、環状路面電車『ドーナツ号』に乗り、テレビ局に向かった。テレビの向こうのワルハラ第二都市の混乱に対し、第一都市は至極平和だ。 レールの中心にある『白馬の森』、そして更にその中央にある『五百の城』は、平生通り長閑な眺めである。 森は緑深く、城の尖塔には、青地に白馬を画いた紋章旗が翻っている。

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