そう言って若者は、会議室のテレビをつけた。

 激しくぶれる画面が、現れた。あまりにもぶれが激しいので、最初、画面全体がぼんやり桃色に染まっているのしか分からなかった。 が、不意にカメラの動きが止まり、映像が鮮明になった。そこに映っている人物を見て、ニルノは愕然とした。


 タキオだ。

 鋼鉄の上半身をむき出しにした友が、戦っていた。腕が六本ある女と。宙で奇々怪々な動きをする女と、弾丸を霰のように浴びても倒れない男。 俄かには信じ難い非現実的な光景と、対照的にあまりにも生々しい気迫。その足元は、極めて長い桃色の海藻のような物で覆われている。

 計画の為に情報収集してきたニルノには、すぐに分かった。あれは、全ての人喰鬼の母体、『女王』の髪の毛だ。


 タキオは今、赤道海の何処かにある女王の巣で、最後の戦いを挑んでいるのだ。


 若者が無造作に撃った銃弾で、テレビは沈黙した。
 若者はそのまま銃口をニルノのこめかみに突きつけ、椅子から立たせた。

「来い」

 茫然自失状態のまま、ニルノは銃口に押され、部屋を出る。

 出たところに、先程インタビューしたばかりの男の死体が、転がっていた。

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