「本当は、怖くて堪らないでしょう。失敗してグールに喰い殺されるより、成功してグールを殲滅した時のことを、想像すると。 絶対的な支配者を失った世界で、息を潜めていた悪党どもが踊り出、新たな支配者の座を狙う者同士が争う可能性について、考えると。 誰にも背負いきれるわけがない、その責任の重さを、思うと」

 彼の声は、責めているようにも、何かを読み上げているようにも聞こえる。からかっているようでも、ある。

「それでも貴方にこの道を行かせる物は何なのか。僕はとても興味がありますね」

 タキオは苦笑し、同時に、帳の向こうへ吐き捨てた。

「嘘つくな。大して興味もない癖に」

「いいえ、本当ですよ。一年近くも監視し、貴方の人となりを知れば知る程」

「俺は単純な人間かも知れないが、それでも、一年付きまとった位で、あれこれ知った気にならない方が良い」

 ナギは沈黙する。

「責任の重さなんざ、糞喰らえ。俺の目的はあくまでグールを倒すこと。その後世界がどうなろうが、俺の知ったこっちゃない」

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