頬の肉が抉れる。額が裂ける。片耳が吹き飛ぶ。顔を歪めながら、相手の武器を破壊し、複眼を潰す。
 鮮烈な痛み。使鎧に響き渡る、衝撃。
 それでもびくともしない使鎧。
 比べ、あまりにも脆い、生身の首。あまりにも粗末な、脳味噌。

「くそっ……!」

 激痛が走る。砕かれた頬骨に。焼けつく耳元に。

 痛みは怖くない。ただ、重い体に、焦る。思うように動かせないのは糸のせいだと分かっているが――
 だが本当に?


 ――本当に、首から下を捨て、大量の人間を殺してまで、行かなければならない道だったのか?



 割れるように、頭が痛む。
 何故? と、ナギの声がこだまし、そこに老人の呪詛が重なる。




 『人喰鬼を殲滅せよ』と命じるゼットウ博士の洗脳に屈するか。発狂死するまで耐えるか。道は二つしかなかった。

 そして、前者を選んだ。

 ここまで来た理由など、それだけのことだ。




 しかしそれでも、その道を選んだのは己であり、他の誰でもない。


 精神も肉体も、己から零れてしまった。 そんな中で唯一つ、紛れもなく己の物と言えるのが、その責任だけとは。

 唯一つ燦然と輝くのが、果てしなく重い、鋼の塊とは。

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