十五分経った。

 アリオは虚ろな目で、テレビを見つめていた。

 映像は変わらない。相も変わらず、わけの分からぬ映像を流し続けている。ニルノは、エイト・フィールドの説得に失敗したのだ。

 まあ、端から期待はしていなかった。何せ、ユニコーン号での丸二日、ただ眠り続けていただけの男だ。
 電話の向こうの口振りからして、相手は自分のことを覚えていないようだったが、アリオは覚えていた。 ロミと一緒に、ユニコーン号に密航していた男だ。出会ってすぐ、盛大に吐いてぶっ倒れたので、自分とオリザの部屋に寝かせてやった恩もある。 と言っても、彼と直接言葉を交わしたことはほとんど無かったので、ニルノが覚えていなかったのも無理はないが。

 成程。あいつ、新聞記者だったのか。それで、不釣合いにもこんな美人の彼女がいる、と。

 アリオは、テレビからアイへ視線を移した。アイは椅子に座り、瞬きもせずこちらを見つめている。 彼女の周囲には、縄で縛られた同僚の男たちが数人、転がっている。それに、先程までアイにインタビューしていたクレーター・テレビのカメラマンとリポーター。 アリオが彼女に命じて、縛らせたのだ。 皆、声も出せず、こちらの成り行きを見守っている。

 アリオはテレビを消すと、わざとらしく溜め息をついた。

「ふざけるな!」

 と、男の一人が、喚いた。

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