何だこれ、とヒヨが呟いた。グレオもぽかんと口を開けた。

 トマは、望遠鏡から目を離さなかった。が、左の耳で、聞いていた。 朝からクレーター・ルーム封鎖のニュースを報道し続けているテレビに、突然雑音が混じるのを。 そして、エイト・フィールドを名乗る者の、世界的なテレビ局の乗っ取り宣言。グールを殲滅するという文言。

「トマ? どうした」

 右耳に当てた受話器の向こうから、諜報部長の声がした。トマは答えた。

「テレビを見てください。今すぐに」

 長い沈黙の後、すっかり調子を変え、諜報部長は呟いた。

「どういうことだ、これは」

 どういうことか? トマに聞かれても、分かるはずがない。トマは望遠鏡を見つめたまま、長考した。 そして、答えた。

「少なくとも、我々の標的は単独行動を取っているようなので、この件とは無関係でしょう。 今のところ、標的に動きはない。我々は引き続き、我々の任務を遂行します」

 気をつけろ、とうわ言のように諜報部長が言った。

 受話器を置くと、ヒヨとグレオが低い声でかわす会話が、耳に入ってきた。

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