「エイト・フィールドの奴ら、反グール主義者どもと手を組んだのか?」

「超利己主義のあいつらが? あり得ない」

「しかし、全世界のテレビ局を同時占拠した上で、こんな映像を流すなんて、世界各国に対する宣戦布告も同然だぞ。 クレーター・ルームの閉鎖騒ぎはアリオの仕業と思っていたが…… もしかして奴らの仕業なのかも」

 彼らの方を見ないまま、トマは言った。

「こちらはこちらで諜報部が早急に捜査を始めるだろう。 世界がどうなろうとも、アリオが非常に危険な毒薬を持って街をうろついている状況には変わりない。 一刻も早く、奴を捕まえなければ」

 二人がこちらを見るのが、気配で分かる。視線に、動揺が混じっているのも。

 トマの視線だけが、ぶれることなく、望遠鏡の奥を見つめていた。
 二人の言わんとすることは、分かっている。これまでレッドペッパーが扱ってきたどんな事件よりも、テロ組織よりも―― 否、テロなどと言う範疇を超えた出来事が、目の前で起こっているのだ。一般市民として動揺せずには、 そして軍人として何か行動を起こさなくては、と思うのも当然だろう。

 しかし今彼らは、一先ずそれを無視し、別の不安の芽を取り除かねばならない。 恐るべき毒薬を所持した、ヨーリン・アリオと言う人物を。

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