部長は早口に捲し立てる。

「しかも彼が言うには、その連絡を受けたのは十五分以上前だと言うんだ。それ以上詳しいことは聞き出せなかった。 何か具合が悪いような声で…… そこまで告げたきり、黙ってしまった」

 そこでグレオが叫んだ。

「ボス! 作業用エレベータの箱が上にあるぞ!」

 こめかみを殴られたような衝撃が、トマを襲った。

 グレオに代わる直前までは―― 否、表の騒ぎに目を奪われるまでは、エレベータの箱は下にあった。 あの数分の間に、誰かがオーツに登ったのだ。

 トマは受話器を置くと、身を翻した。

「グレオはそのまま監視を続行、標的を見つけ次第ライフルで狙撃用意、俺の指示を待て。ヒヨは俺と一緒に来い。 無線の電源を入れておけよ!」

 了解! と応じるグレオの声を背中に聞きながら、トマとヒヨは部屋を飛び出した。

 表の人混みを抜け、環境局の敷地に駆け込む。門で警備員に止められたが、ヒヨが彼の顔に軍の徽章を叩きつけるようにして、通り抜ける。 緑の芝生に覆われた敷地は巨大な樹に抱かれ、表の騒乱からも遠く、長閑そのものだ。環境局の事務所とオーツとを見比べ、トマは即座に判断を下した。

「ヒヨは建物の中へ。気をつけろよ。建物内の安全が確認出来次第、オーツを登って来い」

「了解!」

 ヒヨは建物へ、トマは作業用エレベータへ駆け寄った。

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