まさか、彼一人置いて逃げろと言うのか。そんなこと、出来るわけがない。ロミから見ても、はっきり分かる。この戦いは、今までになく不利だと。 超合金で出来た肉体を手に入れ、まさに人間離れした快進撃を続けてきたタキオにとって初めて、敗色の色が濃い状況だと。

 しかし蜘蛛の糸の向こうで、タキオの顔に浮かんだのは、変わらぬ飄々とした笑みだった。

「俺はしんがりだ。あいつらの追撃を防ぐ。流石のお前も、この蜘蛛の巣の中であいつらを回収するのは、時間がかかるだろう」

 それでもロミが不安な顔をしていると、タキオは溜め息をついた。

「残念だが、撤退だ。次の機会に、出直しだな」

 それでようやくロミは、頷いた。

 そうと決まれば、可能な限り迅速にオズマとダイを回収し、地上へ続く階段を駆け上がらなければならない。

 ロミは素早く辺りを見渡し、深海の密室の、それぞれの位置状況を把握した。 オズマとダイは幸いなことに、階段近くに二人固まっている。女王とナギがいる中心部に最も近く、ニィナと対峙しているのが、タキオだ。 自分はオズマたちとタキオの中間にいる。

 最も危険な位置にいて、しかも蜘蛛の糸に最も苦戦しているのがタキオだが、大丈夫だろうか。
 ロミがそう案じた瞬間、タキオが、雄叫びを上げた。

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