「俺に任せろ!」

 焦るロミの横で、オズマが刀を構え直す。

「階段までの道は、作ってやる。全速力で駆け抜けな」

 そう言って精神を集中させたかと思うと、サングラスの奥の瞳を括目し、オズマは刀を突き出した。

 階段の方向に向けて突き出された刀が、刃の触れた場所だけでなく、そのずっと先まで糸を断ち切る。

 どんな絡繰りなのか、考える暇もない。活路が開けたと見るや、ロミは二人を引っ掴み、疾走した。 瞬く間に伸びてくる新たな糸が、体に触れる。大人二人分の重さに、上半身が千切れそうになる。
 それでも数秒後には、階段に辿り着いていた。背後で糸の追撃が、止まった。 そこが、ナギが糸を伸ばせる限界らしい。

「凄いですね、さっきの技! 漫画みたいでしたよ!」

「それよりカメラ! タキオを映して!」

 はしゃぐダイを叱りつけ、ロミは背後を振り返った。

 思いのほか、タキオは近くまで来ていた。階段までの道は再び糸で塞がれてしまっているが、この分なら、彼も程なく戦線を離脱出来そうだ。

 こちらを振り向いたタキオと、目が合った。
 彼は安心したように、微笑んだ。

「カメラまだ映してるか!」

「うん! 映してるよ! ねえ早く!」

「良かった。それじゃ、最後に一言言えるな」

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