「……今の、女王の。撮った?」

「女王の? 奴が何か言ったのか? 俺たちからはタキオしか見えないし、何も聞こえないが」

「それより、早く逃げましょうよ! 奴らと一緒に心中なんて、俺は嫌ですよ!」

 するとタキオが、手を振った。カメラの角度を少しずらせ、と指示する。オズマたちが反発すると、「三十秒だけ時間をくれ」と、飄々とのたまう。 渋々指示に従い、タキオの姿を画面から外すと、タキオは、ロミに向かって、言った。


「ここまで一緒に来てくれて、ありがとうな」


 そう言ってタキオは、照れたように、笑った。


「こんな危険な旅路につきあわせるべきじゃない、と頭では分かっていたが、お前はまるで温かい炎みたいで、側から離れ難くてな」


 ロミの頭が、真っ赤に焼ける。心臓が、悲鳴を上げる。

 そんなことには気づかず、鋼色の瞳は、優しく細められる。



「お前は家族の復讐の為についてきたって、分かっている。こんな中途半端じゃ納得出来ないだろう。 けどな……


 俺たちの友情に免じて、俺の最後の我儘を聞いてくれるなら――


 もう、復讐なんて止めろ。もっとお前に相応しい、幸せな道を、生きてくれ」






 そして彼は、行け! と叫んだ。

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