違うよ、とロミは嗚咽の間に呟いた。



 違うよ、違うよ、違うよ。



 最初は確かに、復讐の為だった。己の村を滅ぼされ、家族を殺され、足を喰われたことへの。
 夜は夢の中で家族を想って泣き、昼間は彼らを奪われたことへの怒りに震えた。
 涙か、血か。その二つだけが、命の火種だった。その二つだけで半死半生を生き延び、金色の脚を装着する大手術に耐えた。 グールを滅ぼす男と共に行く、と決めた。

 もう復讐以外に、生きる意味などなかった。生きる道があると思えなかった。

 けれどそれは違った。

 少しずつ見える景色が変わっていった。食べ物の味が蘇ってきた。小鳥の囀りや子供の笑い声が聞こえるようになってきた。 夜に家族の夢を見て泣くことは変わらなかったが、昼には笑えるようになっていた。



 そういう風に新たな道を示してくれたのは、タキオだ。



 復讐なんかの為に、ここまでついてきたわけじゃない。最初はそうだったかも知れないが、もう、とうに金色の瞳を熱する物は変わっていた。

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