芝生の敷き詰められた敷地を突っ切り、オーツに設置された作業用エレベータに駆け寄る。 その半ばで、「待て!」と怒声が上がった。同時に、地響きと騒音、それに何より剣呑な雰囲気が、背後から湧き上がった。 あっという間に髪を捕らえられたレインは、頭を仰け反らせた。

「やっぱり、こいつだ! 人間農場から逃げ出した家畜だ!」

 仰け反った瞳に、いつかマリサと絵本で見た怪物のような、不気味な形相が映る。
 それは、顔をどす黒く歪ませた男や女、それに警官たちだった。 一体どこから湧いて出たのか、何故彼らに髪を掴まれなければならないのか。その理由も知らされぬまま、レインは四足の獣のように、地面に引きずり倒された。

「ほら見ろ! こいつは一人だけ、平気な顔をしていやがる! この騒ぎを起こしているテロリストの一味なんだ!」

「人間農場の仲間を解放しようとしているんだ!」

「否、俺たち人間に、復讐しようって言うんだ!」

 唾と罵声が降り注ぎ、何本もの手がレインの体を打つ。レインはますます瓶を固く握り、必死に抵抗する。

「さあ早くこいつを逮捕して!」

「仲間はどこにいる? 吐くんだ!」

 誰かの膝と地面の間に押し潰され、ルツの造った左手が、小さく折れる音がした。


 その音を聞いた瞬間、レインは、己の血管の中で、怒りが駆け巡っていることに気がついた。

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