レインはルツを、抱きしめ返した。


 それから数日間、レインは、病院で過ごした。

 病室の出入り口は、終始警官に見張られていた。やはりレインは、一連の騒ぎに関し、少なからず関与を疑われていた。 しかし、事情聴収は成らなかった。ルツが物凄い剣幕で追い返したからだ。 「病室に入りたきゃ、私を倒していくのね」と息まくルツの後ろで、レインはマリサと、絵を画いたり折り紙を折ったりして安穏に過ごした。

「このまま、夏休みが始まるまで入院していたいな」

 と、すっかり健康な見た目を取り戻したマリサは、ベッドの上で飛び跳ねた。

「そうしたら、またエッダおばさんの家に行こうね!」

 手紙を書きながら、レインは頷いた。

 手紙の宛先は、セムだ。母親のエッダから電話があった、とルツが教えてくれた。 あの後セムは引き返し、事件には巻き込まれずに済んだこと、レインたちの身を死ぬ程心配していること。
 無事を教えてあげなさい、と言われ、レインは久しく書いていなかった文字を、便箋に認めた。 毒は綺麗さっぱり無くなったこと。ドームもシャッターも開放され、街は普段通りに戻ったこと。 勿論、自分たちも普段に戻りつつあること。

 セムに、とても感謝していること。

 何とか書き終えると、警官たちを追い払ったルツが、傍へやってきた。 はしゃぎ過ぎて寝てしまったマリサの毛布を整え、レインの枕元に座った。

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